インハウスデザイナーはつまらない?事業会社の中で起きていること

働き方・フリーランス

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Webデザイナー インハウスデザイナーが事業会社の中で感じるつまらなさ

社内デザイナー、思ってたより地味かも…

これ、私の力不足なのかな…

AKIAKI

その感覚、私も事業会社の中にいたときに持っていました。ただ、力不足という話ではないことが多いです。

事業会社の中でデザインの仕事をしていると、ある時期から急に手応えが薄くなることがあります。バナーの差し替え、既存ページの文言修正、社内資料の体裁直し。どれも必要な仕事なのに、終わったあとに何も残っていない感じがする。

正直なところ、私も同じ時期を通っています。当時は自分の実力の問題だと思っていました。今振り返ると、個人の頑張りではどうにもならない部分と、自分で変えられる部分が混ざっていたのだと思います。そこを分けないまま「つまらない」と感じ続けるのは、けっこうもったいない。

この記事では、事業会社の中で何が起きているのかを構造として整理したうえで、社内で動かせるところと、動かないところを切り分けます。デザイナーとして中にいた実感と、情シスの責任者として予算や工数の付き方を見てきた立場、それから採用担当として「インハウスでした」と話す応募者を見てきた経験、この3つから書いています。

この記事を書いた人
AKI

全くの未経験から独学とスクールを経てWebデザイナーへ転職。その後Webデザイナー・Webディレクターとして働き、現在は本ブログの運営やWebサイト制作を通じてデザインに携わる。IT業界経験20年以上。
運営者情報とこのサイトが書かないこと

インハウスデザイナーが「つまらない」と感じる4つの場面

まとめて「つまらない」と言われがちですが、中身を分けると4つくらいに整理できます。自分がどれに当てはまるかで、次にやることが変わります。

  1. 作るものが毎回同じで、判断する幅がない:既存フォーマットへの流し込みが続き、決めることが残っていない
  2. 依頼が「課題」ではなく「作業」で来る:何を解決したいかではなく、完成形の指示だけが降りてくる
  3. 社内に評価できる人がいない:良い悪いのフィードバックが返らず、通ったか通らないかだけになる
  4. 締切はあるのに、良し悪しの基準がない:期限は明確なのに、何をもって成功かが誰も言えない

このうち①と②は、いる部署やフェーズが変わると解消することがあります。やっかいなのは③と④で、これは個人のスキルではなく、会社の中でデザインがどこに置かれているかの問題です。頑張って上手くなっても、上手くなったことに気づく人が社内にいない、という状態は起こり得ます。

AKIAKI

③と④が続くと、自分の判断が合っているのか分からなくなってきます。そこがいちばんしんどいところかもしれません。

なぜ雑用化が起きるのか|事業会社の中の構造

結論から言うと、デザイン業務が「投資」として置かれているか「コスト」として置かれているかで、日々の仕事の中身がかなり変わります。ここは本人の努力とほとんど関係がありません。

予算と工数は、部署の位置で決まってしまう

情シスの責任者として社内の予算や工数の付き方を見ていて、はっきりしていたことがあります。売上に直接ひもづく部署の依頼は工数が確保され、そうでない依頼は「空いている人がやる」に流れる、という傾向です。

デザイナーが事業部の中にいるのか、管理部門やコーポレート側にいるのかで、届く依頼の質が変わります。後者だと、社内資料や説明会の体裁といった依頼が集まりやすい。悪気があるわけではなく、単純に「その人に頼むのが早い」からそうなります。

「社内の人が作れる」ことは、外注とは意味が違う

外部に発注する場合、依頼側は見積もりを取り、要件を書き、稟議を通します。金額が動くので、上長の承認も要る。この過程で「何のために作るのか」が嫌でも言語化されます。

ところが社内にデザイナーがいると、この手順が全部飛びます。私のところに来ていた依頼は、打ち合わせの場での口頭が中心でした。文章にすらならないぶん、なおさら曖昧になります。

多かったのは「ここを赤字で強調して」「もっと大きく」といった、依頼する人の好みや感覚をそのまま渡される形です。何のためにそうしたいのかは説明されない。見積もりも要件定義も稟議もないので、目的を言語化する工程そのものが発生しません。依頼した側も、悪気なく省略しています。

ただ、全員がそうだったわけではありません。今振り返ると、ある程度の役職の方や、仕事の進め方が上手い人は共通して「何のために・誰に向けて必要か」を先に話してくれました。内容までは覚えていませんが、その依頼は作りやすかったことは覚えています。

ポイント

雑用化は、社内デザイナーの価値が低いから起きるのではありません。むしろ「頼むコストがゼロに近い」ことの副作用として起きます。手軽に頼めるからこそ、目的の言語化が省略されてしまう。

この構造が分かると、対処の方向も変わります。作業量を減らす交渉より、依頼が入ってくる入口で目的を1行だけ書いてもらう、といった打ち手のほうが効きます。実際、これは社内でも動かせる範囲です。

📌 関連記事:Webデザイナーの働き方とメリット・デメリットを解説 — 事業会社・SES・フリーランスで、仕事の入り方がどう変わるかを整理しています。

「評価されない」は、成果の見せ方の問題であることもある

構造の話をしたうえで、ここは自分側で動かせる部分です。少し耳が痛い話かもしれません。

社内デザイナーの成果は、数字に紐づけないと消える

制作物は納品した時点で日常に溶けていきます。改善したLPも、3ヶ月後には「前からこうだった」ことになる。変更前後の数字を自分で記録していないと、やった事実そのものが残りません

難しいことをする必要はなくて、変更した日付、変えた理由、変える前と後の数値、この3つを自分用のメモに残すだけでも違います。私はこれを始めるのが遅かったので、当時は甘かったなと今は思います。

面接で「インハウスでした」と話す人の、伝わる話し方・伝わらない話し方

採用に携わってきた中で、事業会社出身の方の面接も担当してきました。そこで感じてきた差を書きます。ジャッジではなく、単純に伝わり方の問題です。

伝わりやすい話し方
  • どんな課題があって、何を変えて、どうなったかを順番に話せる
  • 社内的な事情(予算・工数・調整)も含めて経緯を説明できる
  • うまくいかなかった案件を、原因の整理つきで話せる
伝わりにくい話し方
  • 担当した制作物の点数だけを並べる
  • 「社内の都合で決まったので」で説明が止まる
  • 見せられる成果物が、フォーマットの流し込みばかりになっている

いちばん差が出るのは、同じ仕事を説明したときの粒度です。面接でよく聞いたのは「バナーを作りました」「LPのデザインだけしました」「コーディングだけ頑張りました」という形。作った物の名前で終わってしまうパターンです。

反対に印象に残るのは、意図や背景をセットで話せる人でした。「こういう効果を狙って、ここをこう変えました」という言い方ができると、同じ仕事の話でも判断した跡が見えます。

インハウス特有だと感じるのは、「社内の都合で決まったので」で説明が止まってしまうパターンです。実際そのとおりなのですが、聞く側からするとその制約の中であなたが何を選んだのかが分からない。面接する側からは「言われたことをやっていた人」に見えてしまいます。本当はそうでなくても、そう伝わってしまう。

逆に、制約を話したうえで自分の動きまで続けられる人がいます。制約はたいてい予算の話でしたが、「素材がなかったので自分で撮影もしました」「イラストがなかったので自分で描いちゃいました」。こういう言い方をされると、まったく違って聞こえました。

ここで言いたいのは、インハウスの経験が不利ということではありません。むしろ社内調整をくぐった経験は、外から来た人には作れない材料です。ただ、その材料は本人が言葉にしないと相手には見えない。もったいないと感じる場面が、実際にありました。

AKIAKI

「地味な調整をやってきた」ことは、話し方さえ整えば、けっこう強い材料になります。

スキルは本当に伸びないのか

「インハウスだとスキルが伸びない」という言い方をよく見かけます。実感としては、伸びるものと伸びにくいものがはっきり分かれる、というのが近いです。

インハウスで伸びやすいものインハウスでは機会が来にくいもの
事業の理解・数字の読み方表現の引き出しの幅
社内調整と合意形成短納期でさばく速度
運用を前提にした設計案件ごとのトーンの切り替え
継続的な改善の進め方他社のやり方に触れる機会

この表を見ると分かるとおり、伸びにくい側は「数と種類」でしか手に入らないものが多いです。同じサービスを担当し続ける環境だと、意識してもなかなか埋まりません。

逆に左側は、同じ事業に長く関わるからこそ溜まっていくものです。どちらが上ということではなく、置かれた場所で手に入るものが違う、というだけだと思っています。自分が今どちらを増やしたいのかで、判断は変わってきます。

📌 関連記事:Webデザイナーとは何をする仕事?仕事内容・ツール・1日の流れ — 制作会社とインハウスで仕事の中身がどう違うかは、こちらで比較しています。

📌 関連記事:プロジェクト先とは?SES常駐の意味をIT業界20年が解説 — 常駐型だと、担当する案件の変わり方がまた違ってきます。

社内で変えられること・変えられないこと

ここまでを踏まえて、切り分けます。順番としては、変えられる側を一度試してからのほうがいいと思っています。試さずに環境のせいにすると、次の場所でも同じことが起きやすいので。

変えられること

  1. 依頼の入口に「目的を1行」を足してもらう(「誰に・何をしてほしくて・いつまでに」の3項目だけのフォームを自分で作って配る。私も実際に運用しましたが、浸透するかは人によってばらつきました。そのほうが早いと分かる人は使ってくれる一方、強制力がないと定着しないのが正直なところです)
  2. 変更前後の数値を自分用に記録する習慣をつくる
  3. 年に1本でいいので、目的から自分で決めた制作物をつくる
  4. 他部署の定例に顔を出して、事業側の課題を直接聞く

どれも許可がいらない範囲で始められます。ただし1番目のように相手がいるものは、思ったほど定着しません。特に3番目は、社内の評価とは別に、自分の判断力が鈍っていないかを確かめる意味でも効きます。

変えられないこと

  • 会社の中でデザインが置かれている場所:事業部側かコーポレート側かは、一担当者では動かせません
  • 意思決定にデザインが入るタイミング:決まったあとに呼ばれる構造は、役職や組織図の問題です
  • 評価する人が社内にいるかどうか:これは採用や組織の話で、時間軸が長すぎます

この3つが揃っている状態で「つまらない」が続いているなら、それは環境の問題として扱っていいと思います。1年やって動かなかったものが、2年目に動くことはあまりありません。

そのうえで外を見る場合、いきなり応募に進むより、今の経験が他社でどう評価されるのかを先に確かめたほうが判断しやすいです。求人票を眺めるだけでは、自分の経歴の値付けは分かりません。

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登録すると、そのあとにキャリアアドバイザーとの面談(電話かオンライン)があります。経歴がどう扱われるかや求人の目安が分かるのはこの面談の場なので、登録だけで完結するわけではない点は先に書いておきます。

ただ、すぐ動く必要はありません。今の市場で自分の経歴がどう扱われるかを知ったうえで、社内に残る判断をする人もいます。判断材料が増えること自体に意味がある、というくらいの位置づけで十分です。

📌 関連記事:「Webデザイナーはやめとけ」は本当?採用担当が正直に答える理由と判断基準 — こちらは、これからWebデザイナーを目指すか迷っている方向けに書いています。

よくある質問

Q:インハウスデザイナーの年収は低いのですか?

A:低いと決まっているわけではなく、その会社の給与テーブルに乗るかどうかで変わります。事業会社では職種別の給与体系が用意されていないことがあり、その場合は総合職の枠に収まります。上限が読みやすい代わりに、成果で大きく跳ねることも起きにくい。水準そのものが低いという話ではなく、上振れしにくいという意味です。安定と引き換えに振れ幅が小さくなる、と考えたほうが実態に近いと思います。

Q:制作会社と事業会社、どちらが向いていますか?

A:私は事業会社とSES常駐の経験で、制作会社に在籍したことはありません。なので制作会社の内側を自分の体験として語ることはできません。言えるのは事業会社側で何が溜まるかだけで、そこは上の表のとおりです。両者の仕事の中身の違いはWebデザイナーとは何をする仕事?で比較しているので、そちらを見てください。面接で制作会社出身の方から聞く限りでは、案件の数と切り替えの速さがかなり違うようです。

Q:つまらないと感じるのは、甘えでしょうか?

A:甘えかどうかで考えると、答えが出ないまま時間が過ぎます。それより「変えられることを試したか」で見たほうが判断しやすい。この記事の変えられること4つを半年やってみて、それでも何も動かないなら、環境側の要因が大きいと考えていいと思います。

Q:社内で評価されないまま転職すると、不利になりませんか?

A:社内評価そのものは、選考でほとんど見えません。見えるのは、何を考えて何をやったかを本人が説明できるかどうかです。評価制度が整っていない会社にいたこと自体は、マイナスにはなりませんでした。ただ、成果を記録していないと説明の材料が足りなくなるので、そこは在職中から手を打っておくほうが安全です。

まとめ

AKIAKI

つまらないと感じたこと自体は、悪いことではないと思っています。ちゃんと違和感に気づけている、ということなので。

📝 要点
  • 「つまらない」の中身は4つに分かれる。③評価する人がいない・④基準がない は個人のスキルの問題ではない
  • 雑用化は、社内デザイナーの価値が低いからではなく「頼むコストが低い」ことの副作用として起きる
  • 評価されない状態は、変更前後の数値を記録するだけでも変わることがある
  • 伸びやすいもの(事業理解・調整・運用設計)と伸びにくいもの(表現の幅・速度)がはっきり分かれる
  • デザインの置かれ場所・意思決定の順番・評価者の不在、この3つが揃っているなら環境の問題として扱ってよい

全部を一度に変えようとすると、たいてい途中で止まります。まずは依頼のフォームに1行足すところからでも十分です。半年後に何も動いていなければ、そのときに外を見ればいい。順番を守るだけで、判断の精度はかなり上がります

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